葱と鴨。

文化系、ゲーム、映画、ジェンダー。https://twitter.com/cho_tsugai

眞人はなぜ着替えるのか 「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想文

ネタバレ全開です、OKだという方だけつづきをどうぞ 「肝心の場面に居合わせられない蚊帳の外の人の話」というのが「君たちはどう生きるか」のファーストインプレッションだった。 最初に違和感があったのは、冒頭の火事のシーン。夜半に目をさました主人公…

「嫌いなことは何個もあるのに、情熱を持ってやりたいことは特にない」そんな現代人のための切ない物語 「EO」

中学生のようなことを聞くんですが「本当にやりたいこと」ってありますか? ある、と自信を持って断言できる人は続きを読まないでたぶん大丈夫です。頑張ってください、応援してます。 でも正直、8割ぐらいの人は答えに詰まるとおもうんですよね。 まぁまぁ…

仕事や勉強をクエスト的に攻略するゲーマーたちは幸せに近づいているか問題

それなりに人口が多いゲームで上位のプレイヤーたちには、共通したある特徴……というか「クセ」がある 彼らは、現実世界の課題(仕事や勉強)を、ゲームのクエストのように捉えて攻略方法を探す生き物である。 たとえばこんな感じ ・まず最初に勝利条件・数値…

すずめの戸締まりは「無敵の子」だった  ※ネタバレあり感想

以下、「すずめの戸締まり」のネタバレを含みます ~~~ 新海誠の新作「すずめの戸締まり」はぎょっとする場面が多い映画だ。 震災の風景や黒い日記はもちろん、「オマエハイラナイ」とか駐車場のアレとか。 中でも特に印象に残ったのが、2つめの扉を閉める…

ソーがMCUの主人公である理由~なぜダメ男だけが生き残ったのか~

MCUの主人公はアイアンマンでもキャプテン・アメリカでもなく、個人的には断トツでソーである。 世間的にはおそらくアイアンマン主人公説が最大派閥で、次がアイアンマンとキャプテン2人主人公説あたりだと思うが、ソーこそが主人公だと考えるのには理由があ…

一度だけ弔辞を読んだことがある

一度だけ弔辞を読んだことがある。 父方の祖父の葬儀だった。他界した時点で80代半ばだったから、まあ大往生ということになるのだろう。祖父とは10代の数年間を一緒に暮らしたが、大学入学で私が東京へ移ってからは年に1、2度会うくらいの関係だった。それほ…

獣道4のときどvs.カワノで「負けないでほしい」と「勝ってほしい」は似ているようで結構ちがうと気づいた話

獣道4のときどvs.カワノ戦を見た。2人は私にとっていわゆる”推し”なのだけど、同じ推しでも「負けないでほしい人」と「勝ってほしい人」って結構ちがうなと感じたので、その話をしてみたい。 私がときどさんを気にしはじめたのはスパ4の頃で、AEが家庭用にま…

日本人は性と暴力の話が大好き たぶんあなたの想像よりずっと

ここに2つのランキングがある。 これは文春オンラインと現代ビジネスという日本の2大総合系ニュースサイトのランキングで、つまりこれは「日本人が好きなものランキング」だ。 文春オンラインの週間ランキング 現代ビジネスの月間ランキング 眺めて気づくの…

「EVE Online」で文化系の顔をした革命家に会った話

今年のはじめから「EVE Online」を細々と遊んでいる。 広い宇宙を自分で隅々までカスタムした船で飛び回り、10人で通り魔したり100人で海賊したり1000人で大戦争したりするMMORPGで、「戦争の損害額が4000万円に達してギネス更新」みたいなニュースになるの…

2017年の3 4さんインタビューを再アップします。

Burning Coreのプレイオフが本当に印象的で3 4さんっていいコーチなんだなぁと改めて思ったので、2017年にLJL公式サイトに寄稿したインタビュー原稿を再掲載します。 ちなみに当時の3 4さんはRAMPAGEというチームのコーチで、メンバーはEviさん、Tussleさん…

スポーツっていうシステムそのものが時代とズレはじめているかもしれない。

最近、スポーツっていうシステムが時代とズレてきたんじゃないかと感じることが増えた。長らくスポーツを仕事にしてきたけれど、ここ1~2年でそのズレが急速に広がった感覚がある。 野球とかサッカーとかっていう個別の種目の話ではなくて、「自分じゃない誰…

プロとは注目と歓声を食べて生きる種族である

DFMのEviさんの「ゲーミングハウスだとLJLの試合に気持ちが入りづらい」という言葉を聞いて、LJLプレイヤーたちは本当にプロになったのだなぁとあらためて思った。 プロの定義みたいな難しい話をするつもりはなくて、要するに「LJLプレイヤーたちは人に注目…

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が傑作だった

家にいる時間が長くなったのをきっかけにディズニーデラックスに登録してマーベルシネマティックユニバース、通称MCUを最初から観ている。 アイアンマンでヒーロー像のアップデートに驚き、アベンジャーズで先進性にふるえ、そしてシビル・ウォーでスコセッ…

2020年のお仕事一覧

<Wellplayed Jounal> <NumberWeb> <大塚食品 e3特設サイト> ときどさん、豊田風佑さん、SHORIさん、マゴさん、大須晶さん、アールさん、カプコン綾野智章さん、マウスコンピュータ杉澤竜也さん、RIZest古澤明仁さん、ファミ通上床光信さん、岸大河さん…

「推し」と「萌え」の違いは、選択可能性ではないか

「推す」という感覚についてしばらく考えていたところへ、シロクマ先生が「萌え」と「推し」の話をしていたので、長らく寝かせていた原稿をいったん形にしてみる。昔は「好き」とか「ファン」とかという言葉で表現されていた行動様式が、いつからか「推す」…

今さらオルフェンズがおもしろかった話

ガンダムオルフェンズの全50話をいまさら一気に観た。 周りから「2期がひどい」と聞いていたのだけど、個人的にはむしろ1期から2期に入って面白くなり、「いつ破綻するんだろう」と思っていたらどんどん魅力的になっていって完結した。 とても議論の全ては追…

「映像研には手を出すな!」 自己表現の時代に、誰かの言葉と身体を借りて語ること

「映像研には手を出すな!」最高です。 クールものを同時進行でみるのは本当にひさしぶりで、最後がたぶん真田丸なので3年ぶりに「来週が待ちきれない気分」を感じてます。 「映像研」はいいところだらけなんですが中でも個人的に好きポイントなのが、オリジ…

『パラサイト 半地下の家族』時計回りの絶望と、具体と抽象のジェットコースター

『パラサイト 半地下の家族』のネタバレを含みます。よければどうぞ。 たとえば、目の前で人が歩いているとする。 その事実を「よく知る」には、2つの方向性がある。 1つの方法は具体的に調べること。 その人はどんな外見か、速度はどのくらいか、肘はどれほ…

『アナと雪の女王2』が解決した「1」の宿題と、ディズニーが扱えずにいるもう1つの問題。

ネタバレを含みます。よろしければどうぞ。 アナと雪の女王1(以下「1」)には、大きく分けて2つテーマがあった。 1つは「男女の性愛こそが最高の関係性であり、女性は受け身でそれを待つ存在である」という、いわゆるディズニープリンセス像を壊すこと。 も…

PerkzこそがG2の中心である、という説

G2は最凶最悪の煽り屋集団である。 中でもtoxicさが際立つのがPerkz。オフィシャルのインタビューでも、SNSでも、お互いのプレイヤーだけに見える試合前のチャットでも、とにかく相手のチームを煽り倒す。 だから彼は熱狂的なファンと同時に、強烈なアンチを…

WCSすごかった

WCSすごかった。 1日たってもまだ頭の中に残ってるので、文章にしてちょっと落ち着きたい。 DFMのあの2試合、SPY戦の勝利、そしてISG戦のあの最後の30分は当分忘れられなさそうな気がする。 スポーツっていうのは本質的に、どこまでいっても他人事だ。 ドイ…

人格を使い分けずに生きられるようになったのはいいことなんだろうか

ここ数年、プライベートでも仕事でもストレスがかかる場面がめっきり減って、ペルソナの使い分けをほとんどしなくなった。取材でも雑談でもVCでも、だいたい似たようなトーンで話したり笑ったりしている。 で、長らくそれはいいことなんだと思ってた。自分と…

小さい頃から雨が好きだった 『天気の子』感想

小さい頃から雨が好きだった。 薄いグレーだった道路に黒い点ができはじめてあっという間に一面が真っ黒になっていく瞬間、それまで我が物顔で光っていた街灯が見る影もなくかすみ、気にも止められていなかったアスファルトの小さな凹凸が水たまりという形で…

ゲーミング腕組みについて1日考えたこと

そろそろ日本のesportsシーンにおける舞台上の強制腕組みシステムやめませんか。 — 岸大河 / Taiga Kishi (@StanSmith_jp) May 22, 2019 岸さんのこのツイートからはじまった「ゲーミング腕組み」の話を朝から1日考えてました。 結論は「腕組みあたりで手を…

2019年のお仕事一覧

<ウェルプレイドジャーナル> <NumberWeb> number.bunshun.jp <LJLオフィシャル> <フォルクスワーゲン> ときど「電脳空間を駆ける」 <eスポーツFIELD> <ALIENWAREZONE> <SHIBUYAGAME>

『愛がなんだ』どころか「それはなんだ」と問いたくなる。

「お互いが納得してるならそれでいいでしょ」という薄っぺらい正論の奥の 「自分が納得すればそれでいい」という個人主義のさらに奥にある 「誰も納得していないのに、そのように立ち現れてしまった関係性」の話。 映画では、穂志もえかや片岡礼子が正論(≒社…

LJLのコールは「応援団問題」です

LJL会場でのコールがちょっと話題になってました。 これはプロ野球やJリーグで続いてきた「応援団問題」の一環で、得意分野なのでモデルケースを紹介しつつ私の考えをまとめます。 結論から書いておくと、私はLJLでの一体型コールについて現時点では慎重派で…

『風立ちぬ』が描いた時間的近視

『風立ちぬ』がテレビ初公開だったらしいので、公開当時に書いた感想を置いておきます。◆「近視」の映画だ、というのが最初の感想だった。 実際の視力以上に、むしろ「時間的近視」とでもいうような人間観だ。主人公は牛乳瓶の底のような、分厚い黒縁の眼鏡…

スポーツは「遊びに過剰な情熱を注ぐ変な人」の祭典

ゲームとスポーツ(eスポーツを含む)の関係が話題になっていたので、乗ります。 いまスポーツとして扱われているあらゆる種目も、かつてはただのゲーム、つまり遊びでした。 野球もサッカーもバスケットも、遊びや祭りとしてはじまりました。もちろんeスポ…

こんまりとはガレンである。

最近、ずっとこんまりのことを考えていた。こんまりというのはもちろんアメリカも人気の片づけのカリスマ、近藤麻理江さんのことだ。 彼女のキーワードは「ときめき」とか色々あるのだけど、大きく括れば持ち物は少ないほどいいという思想の人である。「片づ…