葱と鴨。

文化系、ゲーム、映画、ジェンダー。https://twitter.com/cho_tsugai

カルチャー

「推し」と「萌え」の違いは、選択可能性ではないか

「推す」という感覚についてしばらく考えていたところへ、シロクマ先生が「萌え」と「推し」の話をしていたので、長らく寝かせていた原稿をいったん形にしてみる。昔は「好き」とか「ファン」とかという言葉で表現されていた行動様式が、いつからか「推す」…

今さらオルフェンズがおもしろかった話

ガンダムオルフェンズの全50話をいまさら一気に観た。 周りから「2期がひどい」と聞いていたのだけど、個人的にはむしろ1期から2期に入って面白くなり、「いつ破綻するんだろう」と思っていたらどんどん魅力的になっていって完結した。 とても議論の全ては追…

「映像研には手を出すな!」 自己表現の時代に、誰かの言葉と身体を借りて語ること

「映像研には手を出すな!」最高です。 クールものを同時進行でみるのは本当にひさしぶりで、最後がたぶん真田丸なので3年ぶりに「来週が待ちきれない気分」を感じてます。 「映像研」はいいところだらけなんですが中でも個人的に好きポイントなのが、オリジ…

『パラサイト 半地下の家族』時計回りの絶望と、具体と抽象のジェットコースター

『パラサイト 半地下の家族』のネタバレを含みます。よければどうぞ。 たとえば、目の前で人が歩いているとする。 その事実を「よく知る」には、2つの方向性がある。 1つの方法は具体的に調べること。 その人はどんな外見か、速度はどのくらいか、肘はどれほ…

小さい頃から雨が好きだった 『天気の子』感想

小さい頃から雨が好きだった。 薄いグレーだった道路に黒い点ができはじめてあっという間に一面が真っ黒になっていく瞬間、それまで我が物顔で光っていた街灯が見る影もなくくすんだ姿、気にも止められていなかったアスファルトの小さな凹凸が水たまりという…

ゲーミング腕組みについて1日考えたこと

そろそろ日本のesportsシーンにおける舞台上の強制腕組みシステムやめませんか。 — 岸大河 / Taiga Kishi (@StanSmith_jp) May 22, 2019 岸さんのこのツイートからはじまった「ゲーミング腕組み」の話を朝から1日考えてました。 結論は「腕組みあたりで手を…

『愛がなんだ』どころか「それはなんだ」と問いたくなる。

「お互いが納得してるならそれでいいでしょ」という薄っぺらい正論の奥の 「自分が納得すればそれでいい」という個人主義のさらに奥にある 「誰も納得していないのに、そのように立ち現れてしまった関係性」の話。 映画では、穂志もえかや片岡礼子が正論(≒社…

『風立ちぬ』が描いた時間的近視

『風立ちぬ』がテレビ初公開だったらしいので、公開当時に書いた感想を置いておきます。直したいところいっぱいあるけど、ぐっとこらえてそのままで。◆「近視」の映画だ、というのが最初の感想だった。 主人公の視力ももちろん悪いのだけど、むしろ「時間的…

「好きでゲームしてるだけだから放っておいて」という言葉の記憶

ゲーマーが人生で絶対言ったことありそうなセリフを言います。 「好きでゲームしてるんだから放っといて。別に迷惑かけてないでしょ」 言ったことありますよね? 私はすさまじい回数言ってます。そしてこの感覚は、まだ自分の中にがっちり残ってます。 なの…

ウメブラすごかった

スマブラのコミュニティ大会、ウメブラにはじめて行ってきました。 もうすぐ発売のSwitchのスマブラ新作を64以来でやろうかなぁと思っていたタイミングでWiiU最後の大会があるということで、キャラも技も知らないしプレーヤーもあばだんごさんとにえとのさん…

価値基準を自分たちの手に取り戻す戦い~映画『ブラックパンサー』

マーベルのスーパーヒーローシリーズに登場した、アフリカにルーツを持つ黒人が主人公の『ブラックパンサー』をようやく観られた。 キャストのほとんどに加えて監督やスタッフも黒人中心でヒーロー物を撮るという、成りたちからかなり政治色が強い作品で、女…

空虚な中心としてのスポーツ~想田和弘『ザ・ビッグハウス』~

それをとりまく人々が熱狂し、陶酔し、一体化し、無視し、嫌悪し、大金を投じ、人生を賭ける。 周囲の注目と熱量が高まれば高まるほど、その真ん中にあるアメフトの「空虚な中心」性が浮き彫りになる――。 想田和弘最新作『ザ・ビッグハウス』は、巨大産業で…

『万引き家族』 この世界の複雑さを伝えるには言葉の数が足りなすぎる

『万引き家族』がとてもよかった。 私はいつも映画を観たあとは、「これは○○についての映画だ」とまず一言にしてみることにしている。 そうすると、自分にとって映画のどこの部分が刺さって、何の文脈に乗せるかがいったん決まるから。 後から振り返って的外…

ダンジョンメーカーに3日で30時間もってかれて考えたこと

ダンジョンメーカー、本当に危険です。 金曜の夕方に落として、いま月曜夕方時点ですでに30時間ぐらいやってる。 仕事は? とか聞かれても口ごもるレベル。これを書くためになんとかスマホから手を放しました。 一度にできることが絞り込んであって、テンポ…

極振りの誘惑

極振りというゲーム用語がある。 力や素早さのようなパラメータを自分で振り分けられるゲームで、どれか1つだけを集中的に伸ばすという意味だ。 メリットは力勝負、素早さ勝負みたいな特定の状況で必ず勝てること。 デメリットは、苦手な状況に対応できない…

人生のピークはいつですか?

ロックバンドQueenの有名な曲の1つに『Don’t Stop Me Now』がある。 最初に聴いたのはたぶん高校生の時で、当時は「アップテンポの楽しい曲だな」くらいにしか思わなかった。 ところがこの間、ふとしたきっかけで聴きなおして驚いた。全く、全く違う曲に聴こ…

イーストウッドと情報の取捨選択。『15時17分、パリ行き』感想

テロリストを、同じ列車に乗り合わせた3人の男が取り押さえた。 『15時17分、パリ行き』は、一言でいえばそれだけの映画だ。 2015年に起きた高速鉄道のテロ事件を題材にしたクリント・イーストウッド監督のノンフィクション映画だが、映画の内容自体はいたっ…

ウメハラというアンビバレントな絶対神 ―ときどの涙とリビングザゲーム―

「ゲームの中でぐらいは勝ちたかったんですけど」 3月10日の『獣道』10本先取マッチでウメハラに敗れて、ときどは涙をこらえてそう言った。 ウメハラは「ゲーム以外全部(ときどが)勝ってると思うんですけど」とはぐらかしたが、ときどが何の話をしたか、ど…

「平坦な戦場でぼくらが生き延びること」は2018年にも切実な問いか。~『リバーズエッジ』について~

岡崎京子の話を2018年にするのは難しいなと思う。 『リバーズエッジ』の連載がはじまったのは1993年で、つまり阪神大震災も地下鉄サリン事件も起こっていない、インターネットもない時代だ。 その時代に岡崎京子が描いた高校生たちにとって、最大の関心は「…

物を捨てるのが怖くなる体験。~カオスラウンジ『百五〇年の孤独』感想~

カオスラウンジというアート集団が、『百五〇年の孤独』という展示をやっている。 とても射程の長い印象的な作品で、日常レベルでも「物を捨てるのが怖くなる」という変化があったので、その話をしてみたい。 まずこの展示を簡単に説明しよう。 江戸時代が終…

ディズニーは、完全に本気だ~『スターウォーズ/最後のジェダイ』感想~

ネタばれをおおいに含みます。ご注意ください。 『スターウォーズ/最後のジェダイ』は、ここ数年ディズニーが掲げていた「女性をエンパワーしよう」というキャンペーンをさらに一歩進めたものだった。 その方法は強烈で、どのくらいかというと、私はエヴァン…

虚淵殺すにゃ刃物はいらぬ、大手の配給つけりゃいい。~『GODZILLA 怪獣惑星』感想~

『GODZILLA 怪獣惑星』を観てきた。アニゴジ、というやつだ。 何かを観にいった映画館で予告編が始まった時は「ゴジラのアニメ化かー」ぐらいに思ったのだけど、脚本・虚淵玄という文字に目が止まって観にいくことにした。 ただ残念ながら、アニメ版ゴジラは…

コミュニケーションのコストって結局下がってるの?

対面から始まって、電話、ファックス、メール、LINE、それにSNSと、「コミュニケーションのコストを下げたい」というのは多分おおくの人の悲願だったんだと思う。 気まずい話はもちろん、楽しい話でも直接言うのはやっぱり面倒で、反応も読めないし、まして…

『君の名は。』 自分の人生は自分で決めたいけれど、運命的にあらかじめ決まっていて欲しい、という両立不可能な願望

新海誠と細田守。 よく同じ括りで取り上げられる2人だけど、『君の名は。』を観て、これは新海誠による「自分は細田守のようにならない」という宣言だと理解したので、その話をしたい。ネタバレを含みます。 『君の名は。』の基本的な物語構造は、「偶然に満…

「○○は好きだけど、○○が好きだという人は苦手問題」が解決しました。

見出しは大きく、内容は小さく。 正確には「雨宮まみは好きだけど、雨宮まみを好きだという人には身構えてしまう」という個人的に懸案だった問題が解決した、ということです。結論としては「雨宮まみの文章は好きだけど、雨宮まみ本人は別に好きじゃないし、…

『ベイマックス』の、すごいところとすごくないところ。

初回からテーマがジェンダーじゃない…。 でも流行ものは、流行っているうちに乗らないと…。 ということでベイマックスです。 『ベイマックス』がいろんなところで激賞されて、逆張りの「そこまでか?」というのも出てきて、そろそろ一周した感じでしょうか。…