葱と鴨。

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「男らしい服装」が嫌いだ ~ジーンズ、腕時計、白シャツ~

私のクローゼットに、ジーンズは一本もかかっていない。

自分で洋服を買うようになってから、一度も買ったことがない。多分それは、ジーンズが「男の正装」な感じがしたからだと思う。

 

腕時計も、私が持っていないものの1つだ。

腕に物が巻きついているのが気持ち悪いからだと思っていたけれど、車やスーツやベルトみたいな「男性的ステータスアイテム」としての時計を身に着けたくないと思っていた部分も確実にある。

そういえば学生の頃、見るからにレディースとわかる母親のマフラーを借りていたのを今思い出した。

 

広くは、襟がついた服も好きじゃなかった。

いやおうなく「大人の男性」を想像させるそれは、本当に大敵だった。

学生の頃は襟元の開いた中性的な服ばかりを選んでいたし、会社に入って仕事でスーツを着る必要があった時期は、毎日そのことが本当に嫌だった。

 

それでも難儀なもので、自分が好きなものと「似合う」といわれるものは別だったりする。

「青が似合いそう」は何度言われたかわからないし、かわいいと思った服装よりもシンプルな白シャツが一番好評だったりする。

人に誉めてもらうことは嬉しい反面、それは居心地の悪い時間でもあった。

「男なんだから男らしい格好しろよ」

そんなこと一言も言っていないはずの相手でも、その意図を勝手に邪推して押し黙ることが多かった気がする。「白いシャツが似合う」と言ってくれた人に悪意がないことはわかっていたけど、その価値観が共有できなければ誉められても嬉しさと気持ち悪さは半々だ。

 

自分が極端な例かどうかは、正直よくわからない。

ジェーン・スーさんもピンクと和解するのに三十代後半までかかったというし(

ジェーン・スーは日本人です。: Vol.19 ピンクと和解せよ )、実は結構いるのかもしれない。

 

直感的には女性の方が多いのかなと思うけれど(こじらせ、なんて言葉も流行ったくらいだし)、おそらくそれは女性が容姿で判断される割合が男性より少し高いからで、ということは逆に言えば程度の話でしかなく、男性にもジーンズとかスーツとかを着た自分に違和感がある人がいるはずだと私は感じている。

 

最近でこそようやく「似合う」といわれる服装でお茶を濁すことも、要求された場面でスーツを着ることもそれなりにできるけれど、まだ私は「男の正装」と和解できていない。

したい、とも今は思っていない。これが変わる日は来るのだろうか。