葱と鴨。

文化系、ゲーム、映画、ジェンダー。https://twitter.com/cho_tsugai

2017年の3 4さんインタビューを再アップします。

Burning Coreのプレイオフが本当に印象的で3 4さんっていいコーチなんだなぁと改めて思ったので、2017年にLJL公式サイトに寄稿したインタビュー原稿を再掲載します。

ちなみに当時の3 4さんはRAMPAGEというチームのコーチで、メンバーはEviさん、Tussleさん、Ramuneさん、YutoriMoyashiさん、Daraさん、Lem0nさんでした。

いまの3 4さんがどんなことを考えてコーチングしているのか、また話を聞きたくなりました。

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 『RPGを作ったのは、3 4コーチかもしれない。』

 

 チームにはカラーがあります。

 

 選手のキャラクターはもちろん大きな要素ですが、それと同じか、もしかするとそれ以上に大きな影響力を持つのが指導者、つまりコーチのキャラクターでしょう。

 

 そしてLJLの中で、コーチの重要さをもっとも早い時期から意識していたのは、Rampage(以下RPG)ではないかと思います。韓国人コーチを最初に招いたのも彼らでしたし、昨年秋に3 4(スリーフォー)コーチが就任したときには、選手だけでなくコーチのトライアウトもあったそうです。

 

 とはいえチームのコーチングは方向性も考え方もさまざま。

 権力者型、カリスマ型、モチベーター型、鬼軍曹型……あとは、選手に奉仕するサーバント型なんてのもあります。

 

 では、今のRPGのカラーはどうやってできたのか。そして34コーチはどんな方法でそれを成し遂げたのか。そんな秘密を探ってみました。


大学で勧められたコーチの道

 

――はじめまして。3 4コーチは競技シーンでの活動がRPGが初めてだということなのですが、最初にいままでのLoL歴を教えてください。

 

3 4「LoLを始めたのは高校1年生の時で、最初は遊びでやってたんですよ。韓国ではeスポーツは前から流行ってたからテレビで見てたんだけど、おれがそこに入りたいとかは最初は考えてなかったです。でも大会を見てるうちに自分でもやりたいなと思うようになって、本気で練習しはじめたらレートも上がって、プロを目指すようになりました」

 

――最初はやっぱり選手を目指していたんですね。

 

3 4「でもプロゲーマーを目指す人が多い全南科学大学に入ったら、周りがすごいうまくて(笑)。当時はMidがメインで、Daraと同じチームだった時期もあります。ライバルチームにはTussleもいましたし。でも2人はLJLへ行っちゃうし、ほかの選手もプロになったりでチームが解散して、その後も練習はしてたんですけど、レートがマスターぐらいで止まってしまったんですよね。でも大学の人が『ゲームについての知識もあるし、コーチになってみたら』って言ってくれて、コーチの勉強を始めました」

 

――競技シーンからの叩き上げではなくて、大学でコーチングの勉強をしてた、と。LJLを知ったのはいつ頃でした?

 

3 4「選手をやめてから1年半くらいコーチの勉強をしたんですが、同じ時期にDaraとTussleがRPGに入ったので、オンラインで2人の相談役をやっていたんですよ。日本に来た当時はやっぱり慣れないことが多くて困ることも多いから、そのケアをして欲しいと。だから2人を通してLJLの状況は大体全部わかってましたね」

 

――かなり以前からRPGとは関係があったんですね。

 

3 4「そうですね。それで去年RPGがコーチを探しはじめたときに、大学との契約がちょうど切れて自分もフリーの立場でした。それで『お前しかいない』ってチームに言ってもらって、Daraとかも後押ししてくれて、RPGのコーチをやってみよう、と」


仲の良さ重視は自分自身の経験から

 

――LJLへ来てみて、率直な感想はどうでした?

 

3 4「うーん正直に行って、リーグのレベルはそこまで高くないなと思いました。うまい選手もいるんだけど少し差がある選手もいて、しかもリーグの雰囲気が『強くなろう』っていう感じにそこまでなっていない、という印象でした」

 

――おお、結構厳しい第一印象ですね。1年たって、それは変わりましたか?

 

3 4「もう今シーズンは本当に変わりました。まずおれたち自身のやる気がすごかったし、DFMもおれたちに負けて本気を出したと思うんですよね。それで他のチームもそれに引っ張られてがんばり始めて、どのチームも何か起こそうと狙ってくるし、怖いチームが増えました。今日の7h戦もすごいびびってたんですよ(笑)」

 

――たとえばRPGだと、何が一番大きく変わったんでしょう。

 

3 4「一番は、選手たちがみんなチーム的に考えるようになったこと。前は『おれのレーン』『自分はこうしたい』っていう感じだったけど、今は『おれたちの~』っていう話し方が自然に出るようになったかな」

 

――以前Eviさんに、3 4コーチがRPGで初めにしたのは「チームの仲を良くすること」だと聞きました。「おれたち」という主語が増えたのも似た話なのかなと思うんですが、その方法って韓国では結構一般的なんですか? それとも3 4さんのオリジナル?

 

3 4「自分の経験が大きいですね。大学でDaraと一緒だったチームは、プレーのレベルは本当に低かったんだけど、雰囲気は本当にいいチームだったんですよ。逆にTussleのいたライバルチームは、今LCKのチームにいるような選手もいてレベルは高かったけど、選手の仲があんまりよくなかった。その2チームで試合をすると、半分ぐらいおれたちが勝ってたんですよね。それで、プレーのレベルが低くても仲がいいだけでこんなに勝てるじゃんって(笑)。だからRPGに来たときも、一番は選手同士がお互いのことをわかるのが大切だなって最初から思ってました」

 

Ramuneはみんなの赤ちゃん?

 

――RPGでその狙いはとてもうまくいっているように見えます。チームの人間関係で、キーになってる選手って3 4さんからみて誰かいますか。

 

3 4「みんないい感じだけど、やっぱりRamuneかな。チームで一番若いし、かわいいから他のメンバーもいじるんですよね。本人も『普通そこまでいじられたら怒るでしょ』っていう状態でも平気そうにしてるし、こいつメンタルいいなって思います。メンバー全員にとって弟というか、赤ちゃんというか、そういう感じ(笑)」

 

――赤ちゃん(笑)。でも確かにちょっとのことでは動じない雰囲気はあります。34さん自身はいじる側ですか? それともいじられる側?

 

3 4「どっちかっていうと、いじられる側かな? Tussleには『LoLができるチンパンジーだから放っておこう』とかそんな感じで言ってますけど(笑)。でもみんなにしゃべり方とかをマネされるし、基本はいじられてるかも」

 

――コーチってチームの中で立ち位置が難しい仕事だと思うんですけど、3 4さんにとっていいコーチの条件ってどんな感じなんでしょう。

 

3 4「確かに微妙な立場なんですよ。選手じゃないけどゲームはしてるし、でもゲームにハマったらだめ。選手より少し上の立場だとは思うけど、選手と遠すぎてもうまくいかないから、その距離を上手に作るのが大事だと思います」


3 4さんが考える、コーチの存在意義

 

――LJLにはコーチがいないチームもあります。コーチってそもそもなんで必要なんだと思います?

 

3 4「ゲーム内の話で言うと、選手だけでフィードバックをしても話し合いって絶対まとまらないんですよ。絶対。『おれはこう思う』『いや、こうでしょ』ってなって、それだとチームの考えがひとつにならない。そこでコーチが選手の考えを聞いて、『いまDaraはこういうことを考えてて、だからこういう言い方をしたんだよ、じゃあ一番いい方法はこれじゃない?』って示すのがおれの仕事です。1回まとまっちゃえば、あとは選手同士でも『そしたらこういう可能性もあるんじゃね』って、新しい考えが出てくるようになるから」

 

――上から何かを教えるというより、交通整理をしてる感じなんですね。

 

3 4「ゲーム以外の場面でも大体同じで、選手はゲームに集中するとどうしても会話が減るから、会話が起こるように仕向けたりします。プロ選手はプライドがあるから自分からは言いたくないこともあるけど、言った方がチームのためになることもあるし、そういうのを話せる環境にするのが一番大事」

 

――ああ、RPGがどうして今のようなチームになれたのか、ちょっとその秘密がわかった気がします。

 

3 4「正直、最初はもっとコーチって難しいのかなと思ってたんですよ。選手に何か言ったら『お前の言うこと聞きたくない』って拒否されたりするのかなって。でもオーナーも協力してくれたし、選手たちも歩み寄ってくれて、どうにかうまくいってると思います」

 

――3 4さんにとってRPGの選手たちはどんな存在ですか?

 

3 4「うーん、めんどくさいやつら、かな(笑)? 実際の兄弟は兄だけなんですけど、もし弟がいたらこんな感じなのかなっていうイメージ。めんどくさいけど、えらいし、かわいい。そんな感じ」

 

 Dara、Tussleより1年以上後に日本へ来たはずなのに誰よりも流暢に日本語を話し、冗談と身ぶり手ぶりを交える姿は、軍曹でもサーバントでもなく、まさに長男。それに少し父親成分を加えたイメージでしょうか。

 

 ちなみに、3 4コーチの話し方はこんな感じ(https://twitter.com/ebihuryahurya/status/882883479729455108)です。RPGが今のようなチームになった理由が、少しわかった気がしました。