葱と鴨。

文化系、ゲーム、映画、ジェンダー。https://twitter.com/cho_tsugai

仕事や勉強をクエスト的に攻略するゲーマーたちは幸せに近づいているか問題

それなりに人口が多いゲームで上位のプレイヤーたちには、共通したある特徴……というか「クセ」がある

彼らは、現実世界の課題(仕事や勉強)を、ゲームのクエストのように捉えて攻略方法を探す生き物である。

 

たとえばこんな感じ

・まず最初に勝利条件・数値目標を考える

・その達成に使えそうな効率のいい方法を考える

・禁止やペナルティなどのルールの枠内で、効率よく勝つ方法を考える

・自分の手持ち能力で優位な部分と弱い部分を考える

 

上位ゲーマーたちは、その試行錯誤がうまい。センスと量だけで上がる人もいるのかもしれないけど、上位5%くらいに入る人はだいたい自分なりの上達ルートを持っていて、ゲームの成功体験を現実世界にも適用しようとする。つまり、ゲームのクエストのように勉強や仕事と向き合うことになる

 

~余談~

5%はだいたいLoLならプラチナ3、VALORANTならアセンダント1、ストVならダイヤモンド、雀魂なら雀豪3、くらいのイメージ。学力だと同世代の上位5%は横浜国立大とか広島大くらいに相当する。偏差値で言えば66~67。

ネット上ではプロやチャレンジャーばっかり目にはいるので勘違いしそうになるけど、上位5%は十分に「ゲームが上手い」人たちです。誇ってください。

~余談終わり~

 

で、ゲームが上達する方法は実はちょっと前に流行ったPDCA(plan do check actionっていうやつ)によく似ていて、つまり現実世界でも有効なので結構うまくいく。その結果なにが起きるか。

上位ゲーマーたちは現実の仕事や勉強を効率良く攻略し、社会的成功に向かって走り出すことになる。

私が知っているだけでも、YouTuberやプログラマや編集者やビジネスマンとして成功した元ゲーマーたちがいる。彼らは単にゲームが上手いのではなく、「何かを上達することが上手い」という上位スキルを持っている。

 

だからゲーマーは現代社会におけるエリート候補生なのだ!

…という結論なら、こんな文章は書いていない。

私の問題意識は「与えられた課題を攻略するのは上手いはずなのに、息苦しそうに見えるゲーマーたちが結構いる」という点にある。

 

ゲームの次のハマり先として仕事にハマった人たちは、基本的にワーカホリック気味になる。次々にクエストを与えられる状況を望み、誰も与えてくれなければ自分で自分に次々とクエストを課すようになる。

達成する→クエストが降ってくる→達成する→次が降ってくる、というサイクルが回って本人がそれにモチベーションを感じている間のゲーマーは強い。何でもハイスピードで上達し、攻略し、成果を出す。

でも私の視界には、クエストのジャンルや種類が有限なことに気づいて「飽き」を自覚した瞬間に、立ちすくんでしまうゲーマーたちの姿だ。彼らはこう言っているように見える

「次は何を攻略すればいいですか?」

「全力を出しても報いられる次のゲームをください」

 

でもそう思うのの無理はない。だって、ゲーマーたちに成功体験を与えたゲームというジャンルは、現実世界よりも明らかに「よくできている」のだ。飽きないように、快感が持続するように誰かが調整してくれているのがゲームである。

ゲームを攻略・上達する方法は現実世界にも適用できるけれど、現実世界はそこまでプレイヤーのモチベーションを維持しようとしないし、親切に次のクエストも提示してくれない。一度やめた人への復帰ボーナスもない。

「なんで頑張ってたんだっけ?」と思った瞬間に立ちすくんでしまう人の気持ちはとても良くわかる

 

とりわけ理念や理想から生まれたモチベーションではなく、クイズやパズルを解くような上達の快感・攻略の快感をモチベーションにして快調に走っていたタイプほど、「飽き」は重い。

見たところ、その「飽き」は30台でやってくる人が多いようだ。そのあたりで人間は自分の人生の目的を考え直すタイミングがあるのかもしれない。ミドルエイジクライシスという言葉もある。

 

私が知る何人かの「立ちすくんだゲーマーたち」が、その後にどんな展開を迎えるかはまだわからない。

もう一度なにか別のモチベーションを見つけて競争社会を走り出すルート、

伝統的な価値観(家庭とか趣味とか)に回帰して別の人生を生きるルート、

新しい上達の快感を求めてジャンルやゲームをホッピングしながら生きるルート…

さすがにもうちょっとあるだろうけれど、意味的に分類すればルートは案外少なそうな気がしている。新しいルートを知ってるぞという人はぜひ教えてください。

 

要するに何が言いたいかっていうと、「最近ちょっと迷子だな」と感じるゲーマー気質の人は、自分がどんなモチベーションで動いていたのかを考えるとちょっとマシになるかもしれない、っていうことです。人生は意外と長い。